介護士・看護師として現場で働いて分かったことがあります。学校で習ったことと、実際の現場で求められるスキルには大きな違いがあるということです。
今回は、教科書には載っていないけれど現場では絶対に必要な実践的なスキルを、実体験を交えてお伝えします。
コミュニケーション術:利用者・患者さんとの信頼関係構築
1. 「聞き流し技術」をマスターする
認知症の方や不安な患者さんは、同じことを何度も話されます。教科書的には「傾聴」と習いますが、現場では効率的な聞き流しも重要なスキルです。
実践のコツ
- 相槌のパターンを5つ用意する(「そうですね」「大変でしたね」「なるほど」「そうなんですか」「お疲れさまでした」)
- 手を動かしながらでも聞いている姿勢を保つ
- 重要な情報(痛み、体調変化)だけはしっかりキャッチする
2. 拒否される時の「迂回作戦」
入浴や薬の服用を拒否される場面は日常茶飯事。正面突破ではなく、迂回ルートを用意しておきます。
効果的な迂回パターン
- 「お風呂」→「足湯だけでも」→「足だけ拭きましょうか」
- 「薬」→「お水と一緒に」→「好きな飲み物と」→「食後のデザートと」
- 時間を置いて再トライ(担当者を変える)
効率的な身体介助のコツ
1. 移乗介助は「勢い」より「タイミング」
力任せに移乗しようとして腰を痛める新人さんを多く見てきました。大切なのは利用者さんの自然な動きを利用することです。
実践ポイント
- 利用者さんが前かがみになった瞬間を狙う
- 「せーの」の合図で利用者さんにも力を入れてもらう
- 膝でベッドの高さを調整(自分の膝がベッドに当たる高さがベスト)
2. オムツ交換の「30秒短縮術」
1日何十回も行うオムツ交換。30秒短縮できれば大幅な時間節約になります。
時短テクニック
- 新しいオムツは事前に広げて置いておく
- おしり拭きは3枚重ねで引き出しておく
- 汚れたオムツは丸めて端に寄せ、最後にまとめて処理
- 陰部洗浄は「の」の字を描くように効率的に
緊急時対応の実践知識
1. 転倒事故の初期対応
教科書では「医師に連絡」とありますが、現場ではまず5分間の観察が重要です。
観察チェックリスト
- 意識レベル(名前を呼んで反応確認)
- 痛がっている部位の特定
- 打撲・腫れの有無
- 動かせない部位はないか
- バイタルサインの変化
2. 誤嚥時の対応(背部叩打法の実践版)
教科書通りの背部叩打法では効果が出ないケースがあります。現場では角度と強さの調整がカギです。
効果的な手技
- 叩く位置:肩甲骨の間ではなく、やや下寄り
- 手のひらではなく手の付け根部分を使う
- リズムよく5回、一度様子を見る
- 前かがみの角度は45度程度
記録・報告の効率化
1. 「5W1H記録法」
忙しい現場では記録時間も限られます。要点を押さえた記録術をマスターしましょう。
記録テンプレート例
【いつ】14:30頃
【どこで】居室にて
【誰が】利用者A様が
【何を】転倒
【どうして】車椅子から立ち上がろうとして
【どうなった】左腰部に痛み訴え、湿布貼付対応
2. 申し送りの「結論ファースト法」
長々とした申し送りは聞き手の集中力を削ぎます。結論を最初に言う習慣をつけましょう。
悪い例 「田中さんなんですが、今日の昼食時にお箸を落とされて、それを拾おうとして身を乗り出した際に…」
良い例 「田中さん、昼食時に転倒リスクありました。原因は…」
ストレス管理と心の健康
1. 「3分リセット術」
現場では理不尽なことや感情的になることもあります。そんな時の気持ちの切り替え方法です。
実践ステップ
- 深呼吸を3回(4秒吸って、6秒吐く)
- 肩を上下に動かして筋肉をほぐす
- 「次の利用者さんのために」と心で唱える
2. 家族対応でのメンタルケア
クレームや理不尽な要求に対しては、感情と業務を分離することが重要です。
対処法
-
- 「ご家族の気持ちは理解できます」から始める
- 可能なこと・不可能なことを明確に伝える
- 一人で抱え込まず、チームで対応する
まとめ:現場で生き残るための心構え
現場で長く働き続けるために大切なのは:
- 完璧を目指さない – 60点でも継続することが重要
- 先輩の技を盗む – 見て、聞いて、真似する
- 利用者さんの笑顔を励みにする – 小さな「ありがとう」を大切に
- チームワークを重視する – 一人では限界がある
- 自分の体調管理 – 倒れては元も子もない
現場は教科書通りにはいかないことばかりです。でも、それが介護・看護の仕事の面白さでもあります。
今回紹介したスキルは、私自身が現場で身につけた実践的なものです。皆さんの現場でも、きっと役立つはずです。
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